これは、東日本大震災10年目の特集記事のなかの一つで、仙台フィルのコンサートマスター神谷未穂さんに関するものです。
あのとき神谷さんは、リハーサルでホールにいたそうです。照明が揺れ、譜面台がバンという音とともに倒れた瞬間を鮮明に覚えているといいます。
惨状が明らかになっていくなか、いまこそ活動すべきではないかという声が楽団のなかで上がったそうです。3月下旬にお寺で演奏を再開し、商店街、避難所などへと広がっていきました。
ここで演奏してもいいものだろうかと迷ったこともあったそうですが、子どもたちがうれしそうに集まってきたり、音楽なんて困ると訴えた被災者が、演奏終了後に本当にありがとうと握手を求めてきたりということがあったということです。
そんなことから、音楽の持つ力に自分自身も癒されていることに気づいたといいます。言葉に力はあるが、表現によっては傷つける恐れもあるのに対し、音楽は聞く人の想像にゆだねる部分が多いということから、言葉を持たない力をそのとき初めて感じたそうです。
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